耀盌と和歌

 戦後進駐して来た連合軍の指令によって、不敬罪等の思想犯罪が一掃されたため、第二次大本事件も消滅し、王仁三郎は晴れて無罪となった。
 それまで10年間、大本の活動は停止していたが、昭和21年に王仁三郎は「愛善苑」という名で大本を新出発させる。これは「人類愛善」の精神を実践・普及し、地上天国(みろくの世)の建設に貢献して行こうというものであった。
 そして昭和23年(1948)1月19日、王仁三郎は地上での神業を終えて、天に帰って行った。

 王仁三郎の晩年の活動の一つに「耀盌」(ようわん)の製作がある。  王仁三郎は芸術家としても有名だが、もっとも知られているのがこの「耀盌」と呼ばれる楽焼き茶盌である。
 彩り豊かに塗られた茶盌は、わび・さびの茶の湯の固定概念を大きく打ち壊すものがある。
 王仁三郎はこれを、世の中がまだカーキ色一色だった昭和19年の年末から21年の3月にかけて造り上げた。楽焼きの師匠は京都清水の窯元・佐々木松楽(しょうらく)で、36回窯を焚き、焼き上がった茶盌の数ははっきりと分からないが、3600個以上あると言われている。この膨大な数の茶盌を王仁三郎は「惟神霊幸倍坐世」(かんながらたまちはえませ)と祈りの言葉を唱えながら造り続けた。
王仁三郎の耀盌(耀碗)
王仁三郎・作の耀盌の一部。本来は日用品でも芸術品でもなく、神器であるが、芸術的にも高い評価を受けている。(左の1個以外は出口信一・監修『耀琓』から引用した)
 王仁三郎は精魂込めて造り上げたこれらの茶盌を、訪れた人たちに惜しげもなく与えて行った。
 この茶盌に最初に注目したのは、工芸美術の評論家・加藤義一郎である。王仁三郎の昇天後、昭和24年に『日本美術工芸』誌に王仁三郎の茶盌を掲載し、「明日の茶盌」「耀盌」(耀は耀くの意)と讃えた。以後、王仁三郎の茶盌は「耀盌」と呼ばれるようになる。また「天国茶盌」とか「耀琓」とも呼ばれている。
 王仁三郎は、この茶盌は「みろくの世の御神体だ」と信者に語っているが、まさに天国を表現したかのような茶盌である。
 耀盌の一部は、亀岡・天恩郷のギャラリーで常設展示している。
オニペディア「耀盌」参照)
伊都能売観音像を製作中の王仁三郎
【左】伊都能売観音像を製作中の王仁三郎(昭和6年7月21日)。楽焼(陶器)でできており、実物は天恩郷のギャラリーで見ることができる。 【右】8尺(約2.4m)の大きな筆で「弥勒殿」と揮毫する王仁三郎(昭和5年3月、五六七殿の懸額用の書)
 王仁三郎は生涯で膨大な数の和歌(短歌)を詠んだ歌人でもある。一般には、日本で一番多く和歌を詠んだ人は明治天皇で約10万首、二位は与謝野晶子で約2万首と言われている。しかし王仁三郎は文献に残っているものだけで15万首もあるというから驚きだ。残っていないものも含めれば数十万首は詠んだだろうと言われている。
 内容は、芸術的に高く評価される歌から、道歌(神の教えを説いた歌)、旅の日記として詠んだ歌、日常の些細な話題を詠んだ歌まで多彩である。冗談で詠んだとしか思えないダジャレの歌もたくさんある。
 歌集だけで数十冊あるし、霊界物語の「天祥地瑞」篇(第73~81巻)は、ほとんどが和歌によって物語が綴られている。
 王仁三郎は「和歌は大和魂を練る最も穏健な方法である。和歌をやれば胴がすわって来る」と説く。また「敷島の道」すなわち日本古来の道であるとも説く。

 日本で一番最初に歌を詠んだ人は誰だかご存知だろうか?
 それは素盞嗚尊(すさのおのみこと)である。古事記には113篇の歌謡が出てくるが、その一番最初の歌謡が、素盞嗚尊が詠んだ和歌である。

 八雲たつ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

 王仁三郎はこの和歌を特に重視し、「八雲神歌」(やくもしんか)と呼んだ。「その八重垣を」今度は取り払わねばならないというのだ。国と国、民族と民族、宗教と宗教の間にわだかまる心の八重垣(敵愾心)、また国境や軍隊などの目に見える垣根を取り払り、世界を一つにする、それがスサノオ=王仁三郎の神業であるのだ。
掛軸「地上天国」
【左上】屏風に山水を画いている王仁三郎(昭和7年) 【左下2枚】「㐂」(喜)、「光」の書 【右2枚】掛軸「地上天国」(昭和初期) 左は「汗しぼり働く後の休らひは天津御国の姿なりけり」、右は「芸術の趣味を悟らぬ人々は地上天国夢にも来たらず」と和歌が書かれている。
歌祭り
【左】大福「七福神楽遊図」 【右】王仁三郎は日本古来に行われていた「歌祭り」のやり方を、国学者の岡田惟平(おかだ・これひら)から若い時に教わり、昭和10年10月31日に、第一回目の歌祭りを天恩郷で行った。これは人の心の垣根を取り外すための祭典である。写真は第一回歌祭りで歌を朗詠する王仁三郎。
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